Aug 9 ~ Aug 15 2026

Massive Loss of Trump Company
トランプ・メディアの生き残りをかけた情報漏洩ビジネスと、暗殺計画”おとり”の逆襲


今週アメリカで大きなスキャンダルになったのが、先月トルコで行われたNATOサミットからの帰国の際、イランによる暗殺爆撃が起こると信じたトランプ氏が往路に使ったカタール政府から贈られた 新エアフォース・ワンを使用せず、従来のエアフォース・ワンに搭乗したように見せかけ、ケータリング用のコンテナを使って同機から極秘に脱出。軍用機でイギリスに飛び、 そこに移動しておいた新エアフォース・ワンで人知れず帰国していた事実。
 サミットを含む大統領の外遊には閣僚メンバー、ホワイトハウス・スタッフに加えて、メインストリーム・メディアのホワイトハウス担当のトップ・ジャーナリストがエアフォース・ワンで同行するのが慣例で、 これによって明らかになったのはトランプ氏がそれらの閣僚、スタッフ、ジャーナリストをイランに爆撃されても不思議ではないエアフォース・ワンで帰国させ、事実上の”おとり”として利用し、 彼らの命を軽視したこと。トランプ氏には、この極秘作戦に関与したへグセス国防長官に加えて3名のスタッフ同行が認められ、真っ先にその1人目に選んだのが35歳のブロンド元極右ニュース・キャスターで、 トランプ氏の愛人兼おむつ管理人と揶揄されているナタリー・ハープ。マルコ・ルビオ国務長官、スコット・ベッセント財務長官、トランプ政権極右シナリオの立役者、スティーブン・ミラー政策副首席補佐官らは、 おとり機で帰国させられたメンバー。これによって彼らの盲目的な忠誠心とは裏腹に、トランプ氏にとっての彼らの命の軽さが立証される屈辱を味わったのだった。

 この報道直後に、トランプ氏と大統領専用ヘリ「マリーン・ワン」機内で大喧嘩をした様子が報じられ、突如月末での辞任を発表したのが7月1日に産休から復帰したばかりのキャロライン・リヴィットホワイトハウス報道官。 トランプ氏はSNSで彼女を賞賛し、リヴィットもX上でトランプ氏を賞賛しながら辞任を表明したけれど、それに掲載されたトランプ氏と彼女のスナップは AI生成のタグが付いたフェイク。辞任の理由は「生まれたばかりの子供を含む2人の子供達と過ごす時間を大切にしたい」と表向きには説明されていたものの、 SNSが報じた内部情報では、リヴィットが産休中も毎日のようにトランプ氏から職場復帰を迫るハラスメント的圧力を受け、 本来12週間の産休を9週間で切り上げなければならなかったこと、そして産後に復帰するには報道官の仕事があまりに過酷であったこと。 それに加えてNATOサミットが産休中でなければ、彼女も”おとり機”に乗せられていた1人であることへの不満がトリガーになって突然の辞職になったとの説は有力。
 トランプ氏はリヴィットを「今後も外部アドバイザーにする」と明言したけれど、これは秋の中間選挙で民主党が勝利して トランプ氏弾劾に動いた場合、「大統領アドバイザー」というエグゼクティブ・ポジションを与えておけば、リヴィットが議会証言を逃れられるため。 見方を変えれば、リヴィットがトランプ氏に不利な事実を多数握っていることを示唆しているのだった。



トランプ・メディア、売上げ170万ドルに対して2億3800万ドルの損失


 本来なら優遇するべき人々をないがしろにするトランプ氏の姿勢は、イラン戦争で中東に派遣された空母エイブラハム・リンカーンの海軍兵にも表れており、 通常最長180日であるはずの彼らの海上軍務は延長に次ぐ延長で既に260日以上。米軍中東基地がイラン攻撃でダメージを受け、ヘリコプターさえ飛ばせないため、 食糧や生活物資が届かない事態が続いた結果、兵士達は石鹸、シャンプーも無く、歯磨き粉さえ底をつく状態で、カビたシャワー室や洗面所を使用し、 刑務所より劣悪な食事に耐える毎日。耐えられず海に飛び込んだり、自傷行為をする兵士が相次ぐ様子を兵士の家族が訴えたものの、へグセス国防長官はそれを否定。 民主党も改善要求に動いたことで、ようやく空母ジョージ・ワシントンの派遣と入れ替えが決まったものの、それには数週間を要するのだった。

 一方、空母エイブラハム・リンカーン同様に危機的状況が今週報じられたのがトランプ氏のSNSプラットフォーム「Truth Social/トゥルース・ソーシャル」を運営する TMTG(トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ)。同社は2026年第2四半期の売上げ170万ドルに対して2億3800万ドルの損失を計上。この赤字額は前年同期の10倍以上で、 これを受けてTMTG株価は8%急落したのだった。
トゥルース・ソーシャルが誕生したのは、2021年1月6日のトランプ支持者の議会乱入事件が起こった際、トランプ氏と支持者がTwitterとFacebookを情報拡散手段に利用していたことに 国民の怒りと抗議が集中。双方がトランプ氏や極右インフルエンサーのアカウントを閉鎖したことから、MAGA勢力が自らの主張を 削除やアカウント閉鎖を恐れずに配信する手段を必要としていたため。  その後2022年にイーロン・マスクがツイッターを買収した直後にトランプ氏、及び極右インフルエンサーのアカウントを復活させ、フェイスブックもそれに倣ったことは MAGA勢力に朗報と思われる事態。しかしそれによってトゥルース・ソーシャルが失ったのが「極右派が言論の自由を行使できる唯一のプラットフォーム」という存在意義。
 やがて2024年の大統領選挙が近づくと、トゥルース・ソーシャルはトランプ氏のメッセージが直接投稿される広告塔として、そして当選後は「第2のホワイトハウス広報室」的な役割を発揮。 それでもビジネスがトランプ氏1人に大きく依存することは不安材料で、トランプ氏が大統領であるうちに事業拡大を目論んだTMTGが手を広げたのが オンライン賭博、暗号資産、金融、投資ファンド、原子力エネルギーを含む6つの新規事業。 2026年第2四半期の膨大な損失はそれら失敗を受けてのもので、今後TMTGは今後政府支援が望める原子力ビジネスだけを残し、本来のルーツである情報発信をビジネスの柱にする新展開を打ち出したのだった。



倒産危機を防ぐための情報提供ビジネス


 TMTGの新展開の柱になるのが「Truth API / トゥルースAPI」。これはトランプ氏が発信し、株価、為替、暗号通貨、商品取引市場を大きく左右する ホワイトハウス関連情報への優先的なアクセス権を販売するビジネス。  早い話が「インサイダー・インフォメーション」の高額サブスクリプション・サービスで、その料金は月額6万ドル~10万ドル。 既に10社以上のウォール・ストリートの高速取引業者と契約を結んでおり、今後はトレーダーに止まらず、データセンター企業、報道機関、大規模言語モデル開発企業等にも顧客層が拡大するとトランプ・メディアは予測。 TMTGはトランプが発信する無料の情報を商品に大きな利益を上げることになるけれど、ホワイトハウスは「大統領としてのトランプ氏と実業家としてのトランプ氏との間に利益相反はない」と かなり無理があるビジネスの合法性を謳っているのだった。
 トランプ・メディアが何故こんなえげつないビジネスを始めるかと言えば、同社には莫大な資金が必要であるためで、その原因の1つは昨年からのビットコイン下落でTMTGが10億ドル以上の損失を出しているため。  加えてトランプ・メディアは、特別条項付きの契約で10億ドルを借り入れており、貸した側は転換社債償還期限の18カ月前にあたる今年11月30日に トランプ・メディアに対して社債買い取り要求、すなわち全額返済を求めることが出来るのがその条件。 必ずしも貸した側が返済を求めるとは限らないとは言え、11月30日以降の何時それが起こっても不思議ではない状況で、同社に残された時間はあと僅か。 トランプ氏にとって通算24社目の倒産・撤退になる可能性を含んでいるのが現時点。  もし11月初頭に行われる中間選挙で民主党が議会の主導権を握った場合、既に民主党側はTMTGや、トランプ家の暗号通貨会社ワールド・リバティ・ファイナンシャルを含むトランプ氏のビジネスについて 正式な捜査を行うと明言しており、中間選挙で共和党が勝利しない限りは新たな資金調達も極めて難しい状況であるとのこと。

 そんな状況に追い打ちを掛けるように今週、トランプ氏と前述の愛人と噂されるナタリー・ハープ、さらにケータリング・カーゴでの脱出に選ばれたホワイトハウス大統領次席補佐官ダン・スカヴィーノ、大統領行政府、ホワイトハウスに対して連邦訴訟を起こしたのが、おとり機に乗せられたジャーナリストとそのメディアが所属するフリーダム・オブ・プレス・ファンデーション。  訴状内容はおとりにされたことではなく トゥルースAPIに関するもので、ホワイトハウスが発信する政府関連情報はメディアに対して平等なアクセスが認められているにも関わらず、TMTGが一部の有料クライアントに優先アクセスをさせる違法性、それによる市場操作でトランプ氏、及びサービス・サブスクライバーが私腹を肥やす違法性、さらに大統領が不当に国家情報を商品にする違法性を訴えたもの。何故ここでナタリー・ハープまでが一緒に訴えられたかと言えば、彼女がトランプ氏のトゥルース・ソーシャルの投稿を担当しているのも一因であるものの、これまで公の報道でタブー視されてきた彼女の愛人疑惑をこれを機に大きく国民に知らしめる目的もあるとのこと。
 先週金曜には7月の米国雇用統計が発表され、8万3000の新しい仕事が増える予想を大きく裏切り、2万3000の職が失われるという経済の悪化が露呈したけれど、 歯止めの掛からないインフレと歯止めの掛からないトランプ政権の非常識な暴走ぶりを背景に、確実に勢力を拡大しているのが民主党の中でも旧穏健派に対抗するプログレッシブ派。 「ここまで来ると民主党穏健派のぬるい政策では何も変わらない」と危機感をつのらせる有権者が 本来の支持政党とは無関係に新しい勢力の台頭を望み始めているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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