先週末、悪天候の中で建国250周年を迎えたアメリカは、今週も週明けから北東部を中心に大洪水の被害が報じられ、2026年は上半期だけで復旧費10億ドル規模の大災害が5件、
山火事は3万4000件以上、竜巻は当たり年とあって1141件発生。年明けから現時点までの自然災害の被害総額は470億ドルで、これにイラン戦争の戦費や復興費が加わると
恐ろしい大出費。
そのせいか先月末に2度に渡る大地震で壊滅的な被害を受けたヴェネズエラに対し、トランプ政権は現時点で約3億ドルの救援金と900人の兵士を送るのみに止まっており、
2010年に同様の大地震で被害を受けたハイチにオバマ政権が送った30億ドル以上の援助、7000人の救援兵士に比べると10分の1。
そのトランプ政権は1月にマドゥロ大統領の身柄を拘束して以来、ヴェネズエラの石油輸出から推定80億ドルの歳入を得ているので、これは植民地以下と言われる扱い。
一方、全米各地でトラブル続きだったJuly 4thウィークエンドのパブリシティと、セレブリティ・ゲストがテイラー・スウィフトのウェディングに集中したことが
気に入らなかったトランプ氏は、今週月曜のホワイトハウスでのイベントで、いきなり「自分はTikTokで世界1位だ。テイラー・スウィフトはたかだか11位だ」と、
突然、全くの脈絡も無しにテイラーの名前を挙げて剥き出しにしたのが競争心。その後トルコでのNATOサミットで居眠りをし、各国首脳の失笑を買ったトランプ氏は、
カタール政府から贈られた4億ドルの新エアフォース・ワンでトルコ入りしながら、帰路は従来の旧型エアフォース・ワンを使用。
理由は新型には旧型に搭載された防衛設備が全て整っていない事を政府関係者が懸念したためで、7月6日にイラン国民2000万人が参列した故ハメネイ師の葬儀で
トランプ氏への復讐が謳われ、イランで再び戦況が悪化する中、トルコでは「イランがトランプを暗殺する」という大弾幕も掲げられていたのだった。
今週最大の物議は、言うまでもなくワールドカップ 7月6日のアメリカ対ベルギー戦に本来レッドカードで出場停止処分の米国のエース・ストライカー、フォラリン・バログンをプレーさせるために、
トランプ氏、ホワイトハウス・ディレクター、ハワード・ラトニック商務長官がFIFAに圧力を掛けた問題。
バログンのレッドカード自体も米国サポーターから大きな反発を呼んでいたとは言え、それが政治圧力で突然執行猶予処分になったことには
世界中のサッカー・ファン、欧州サッカー連盟、及び欧州政府が大激怒。
ベルギー・サッカー連盟もFIFAに正式に抗議をしたものの、FIFAは一切取り合ず、通常はこれが抗議に対するFIFAの態度。
それがトランプ政権からの圧力にはあっさり屈したことがベルギー代表とサポーターの闘志に火をつけたようで、試合はベルギーが圧勝。
アメリカ代表は、まるで特別扱いを受けて申し訳ないと言わんばかりの歯車が噛み合わない萎縮したプレーで、
その様子は「ベルギー対11人のアマゾン従業員のようだった」とアメリカ・サポーターに嘆かれ、ベルギーの実況中継では「アメリカが勝てるとすればホワイトハウスが介入する場合だ」という皮肉が聞かれたほど。
試合後には「ベルギーがサッカーの秩序を守った」と、世界中のサッカーファンがベルギーを祝福し、ベルギー代表がトランプ氏に当てつけたYMCAダンスを踊った様子がヴァイラルになったけれど、
フォラリン・バログン自身は、「若い世代にスポーツマンシップを示したい」と、自分に不本意なレッドカードを与えた主審と試合後に笑顔で握手を交わし、その後一切の否定的コメントを避けていただけに、
トランプ介入によって 彼までサッカー・ファンの批判を受ける羽目になったのは残念な限り。
そして翌日7月7日にはリオネル・メッシ率いるアルゼンチンが13のファウルを犯しながらイエロー・カードはゼロ、対戦相手のエジプトは11のファウルにイエロー・カードが5回、
抗議したコーチはレッドカードを受け、エジプトのゴールは取り消し、アルゼンチンへは不当なPKが与えられる茶番の末、アルゼンチンが勝利したことでサッカー界は再び大炎上。
前大会のアルゼンチン勝利への疑念も手伝って、政府機関が調査に乗り出す事態に発展。
そんな今週、米国メディアとSNSに溢れたのが「Trump Curse / トランプ・カース(トランプの呪い)は本物だ!」という指摘。これはトランプ氏と関わると災いが起こるというもので、
それが極めて顕著と言われるのがスポーツ界。今回のチームUSAはもちろんのこと、ミラノ五輪で金メダルを獲得した男子ホッケーチームは、優勝後の電話でトランプ氏が語った女子チーム軽視のジョークを笑ったせいで帰国後はブーイングを浴び、タイガー・ウッズはトランプ氏と個人的にゴルフをするようになって以来、怪我と不調、自動車事故を繰り返す災難続き。
NYニックスはトランプ氏が観戦に訪れた途端にプレー・オフの連勝記録がストップし、NFL、NYジャイアンツのルーキー・クォーターバック、ジャクソン・ダートはトランプ氏とイベントに登場したことで
チームメイトとファンの反発を招くなど、「トランプの呪い」の犠牲者は例を挙げたらきりがないほど存在するのだった。
フォラリン・バログンの出場停止執行猶予処分に話を戻すと、FIFAは同件の釈明声明文で
規律規定第27条に基づく執行猶予は、欧州サッカー連盟が抗議するような「前例の無い不当な措置、競技の公正性を損ねるもの」ではなく、今回のワールドカップ・サイクルで既に事例があるとして
挙げたのが、2025年11月のワールドカップ予選でレッドカードによる3試合出場停止処分を受けたポルトガルのクリスティアーノ・ロナウドが1試合の欠場後、残り2試合が執行猶予になった例。
お陰でロナウドは今大会初戦からの出場が可能になったけれど、そのFIFAの説明に対する欧州のサッカー関係者のリアクションは「これで点が線に繋がった」と、FIFAの腐敗を確信するもの。
ロナウドのレッド・カードは、2025年11月13日の対アイルランド戦。その3日後のアルメニア戦にロナウド抜きのポルトガルが圧勝し、彼の処分に執行猶予がついたのは同月25日のこと。
その間の11月19日にロナウドが出席したのが、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子を迎えてのホワイトハウスのステート・ディナー。
今年3月に総額5500億ドル(約80〜87兆円)の米国投資を引っ提げて訪米した日本の高市首相を迎えた際のステート・ディナーとは全く規模と豪華さが異なる晩餐会には、
アップルのティム・クックを始めとする錚々たる著明ゲストが招かれ、トランプ氏がスピーチの中で「今日、息子のバロンが彼に会えて喜んでいる」と語ったのがロナウド。
ロナウドは2022年12月にアル・ナスルと年俸2億ドル以上で契約を結んで以来、サウジのプロリーグでプレーをしているので、彼が招待されるのは不思議ではないこと。
そしてその場に同席していたのが、写真上中央の晩餐会スナップでイーロン・マスクの後ろに写っているインファンティーノ会長。
サウジは2034年大会のホスト国なので、彼の同席も妥当と見なされるもの。
そのインファンティーノは、今大会の準備を理由に2024年8月からフロリダ州マイアミに移住。メッシが所属するインター・マイアミの本拠地で贅沢なライフスタイルを楽しみながら、
今大会の主要司令部であり、南北アメリカ大陸担当の主要本部として機能するFIFA常設事務所をフロリダ州コーラル・ゲーブルズに開設しており、
トランプ氏とは物理的距離も非常に近い関係。
トランプ氏と個人的に親しいインファンティーノとロナウドには「トランプ・タワー」という共通点があり、
インファンティーノはもはやテナントが寄り付かないトランプタワーの17階全体をFIFAオフィスとしてレンタル。
しかしFIFAは前述のフロリダの常設事務所で全業務を行っているので、トランプ・タワーの物件はもぬけの殻状態。
にも関わらず高額家賃を賄賂代わりにトランプ氏に払い続ける様子が問題視されて久しい状況。
一方、ロナウドはトランプ氏が最初に大統領選に出馬した2015年に、トランプ・タワーのコンドミニアムを1850万ドルで購入。しかし5番街の一等地とは言え、1983年に建てられた天井が低い70坪の物件に
この値段はどう考えてもオーバーペイ。そのため当時から「ロナウドはトランプ・タワーの物件価値を跳ね上げる広告塔を務めただけで、実際の価格は異なる」、「実際には物件を購入していない」などの
憶測を呼んでおり、2021年に彼が1000万ドル以上の損失を出しながら700万ドル台で同物件を売却した際にも飛び交ったのが様々な噂。ちなみにトランプ・オーガニゼーションは、
銀行には資産価値を過大評価した申告で好条件のローンを取り付け、税務署には過小評価の額を申請して税金逃れをした不正会計でNY司法省から訴追されており、
ロナウドのような著名人による物件購入はメディアで報じられるだけに、それを基準にした資産水増しに有益に働くのは言うまでもないこと。
そんなトランプ、ロナウド、インファンティーノが一堂に会した晩餐会の6日後にロナウドの執行猶予が発表されたことは、今となっては多くの人々が首を傾げるより、
逆に納得するストーリーで、FIFAの組織的腐敗を裏付けるエピソードとして語られているのだった。
トランプ氏は、バログン出場停止処分の事実上の取り消しをFIFAに求めたことについてはその正当性を主張。
トランプ氏自身も第一期、第二期政権を通じて、恩赦と言う形で1800人以上の「不当な罪」の取り消しを行っており、
その中に含まれているのが2021年1月6日の議会乱入者1500人。
残りの300人の中には多額の政治献金や、トランプ氏の大統領図書館建設費に数億円の寄付を支払った富豪が多いことから、
”パードン(恩赦)エコノミー”という言葉を生み出したほど。
そんなトランプ氏の「モラル、倫理、スポーツにおける公正性よりも自らの損得、利害優先」の姿勢は、
「自分に有利な場所にボールを移動するようにキャディに命じるトランプ氏のゴルフにも表れている」と指摘されるのだった。
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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