今週のアメリカで大きく報じられたのが、5月以降アメリカ34州に拡大したシクロスポラ寄生虫感染。これは農作物に付着した寄生虫による感染で、症状は下痢、腹部痙攣、めまい等。
今週半ばまで7000件以上の感染が確認され、そのうちの4000件以上がミシガン州。入院者数は感染者11人に対して1人の割合。
感染源として疑われているのはタコベルのレタスでしたが、昨年イーロン・マスク率いるDOGE(政府効率化省)が大幅人員削減をして人手不足となった健康福祉省は、
ロバート・F・ケネディJr同省長官が予算カットを兼ねてシクロスポラ寄生虫を含む複数の病原体の農作物混入のモニタリングを昨年からストップ。そのため未だに感染源が特定できておらず、
6月に10年ぶりの検出が報じられた牛を体内から食い尽くす寄生虫についても同様のモニタリングがストップした結果。
先週までには2026年の麻疹感染も2231件に達し、昨年1年間の感染数2289件とほぼ同等で、健康福祉省の骨抜きは健康保険補助金カットにより国民の8%が保険に加入できない現在、極めて危険と見なされるもの。
さらに今週、アメリカ北東部の1億人以上が吸いこんでいたのが世界最悪レベルの大気。これはカナダの100以上の山火事の煙が流れ込んだ結果で、
NYでも焚火のような匂いが感じられたけれど、ミシガン州では1日にタバコ13本を吸っているのに匹敵するほどの大気の汚染ぶり。この状態は少なくとも週末一杯続くと見込まれるのだった。
ワールドカップも終盤を迎え、SNSでは「疑惑まみれの2022年大会を超える最悪の大会」、「今大会の勝利は無意味」との声が聞かれる中、
トロフィーとは無関係の勝者を生み出しており、筆頭に挙げられるのがランチ・ドレッシング。欧州からやって来たサポーター達がこぞってアメリカで一番人気のクリーミー・ドレッシングの中毒状態に陥り、
空港の土産店でも販売される人気ぶり。しかし機内持ち込みをするには液体容量が多過ぎるため、発売元のクラフト社は米国運輸保安局(TSA)のコンプライアンスを守ったサイズを急遽大量生産。
さらに売り上げを伸ばし、今後の欧州展開も期待されるところ。
また各国サポーターの来店と売り上げが集中したウォルマートとコストコも勝者と言えるけれど、サポーターとして勝者と言えるのは、共に28年ぶりのワールドカップ出場に沸いたタータン・アーミーことスコットランドのサポーターと
ヴァイキング・ロウでSNSを席巻したノルウェイのサポーター。タータン・アーミーは、帰国の際にマサチューセッツ、ロードアイランドのチャリティ、小児病院、子供のためのサッカー・プログラムに3万ドルを寄付しており、これはタータン・アーミーとしては史上最高額の寄付。
プレーヤーとしてダントツの勝者となったのはノルウェイのアーリング・ハーランドで、今大会中に2200万人インスタグラムのフォロワーを増やし、これまで無名だったアメリカで大ブレイク。ハーランド効果のお陰で、
母国に戻った際に彼が抱えていた750ドルのラクーンのはく製は完売。そのスナップがSNSで拡散されて48時間も経たないうちにラクーンを持った彼の姿、彼のユニフォームを着たラクーン人形がネット上で販売されており、
更に恩恵を受けたのがドルチェ&ガッバーナ。というのも高額バッグ・コレクターのハーランドが、ラクーンのスナップで同ブランドの2027年春夏シーズンのバッグを肩から下げていたため。
ハーランドがラクーンのはく製、ウェスタン・ハットやブーツを購入したダラスのショップには、海外からの注文が殺到し、同店ウェブサイトは初めて海外への出荷をスタート。ちなみにチームメイト4人程と来店したハーランドは、
全員合わせて1万ドルのショッピングを全て支払ったとのこと。
一部ではハーランドのアメリカでの大ブレークは、彼が所属するマンチェスター・シティが裏で操作しているとも言われ、理由はマンチェスター・シティが2026年にテキサスで本格的なユース・サッカーのエリート育成プログラム「マンチェスター・シティ・ノース・テキサスFC」を立ち上げたため。ハーランド人気により、この高額プログラムへの加入者急増が見込まれるけれど、かつて貧困層の子供でもプロを目指せたサッカーがどんどん高額になり、その利益に目を付けたプライベート・エクイティが益々価格を跳ね上げているのは悲しい現実。
一方、今大会のジャージー売り上げのNo.1は断然メキシコ。 メディアの勝者と言えるのは3大ネットワークNBC系列のスペイン語放送、テレムンド。
アメリカでは英語放送をFOX、及びFOXスポーツが担当したものの、アンチ・トランプ派のFOX嫌いに加えて、スペイン語が話せる、話せないに関わらず「サッカーを見るならスペイン語の方が盛り上がる」という
視聴者があえてテレムンドにチャンネルを合わせた結果、FOXの視聴率が食われる現象が発生。特にメキシコ対イングランド戦の視聴者数は約2320万人でスペイン語放送史上最多を記録。
メキシコ対エクアドル戦でも約1890万人の視聴者を獲得する大快挙を成し遂げたのだった。
今大会は公正性を欠いたレフリーと、それを肉眼では捉えられないレベルでサポートするVAR(ヴィデオ・アシスタント・レフリー)、不必要な情報を提供するボール内蔵のセンサーが
大顰蹙を買ったけれど、前回カタール大会でヴィデオ・リプレイが使用されたのは約30回。今大会は準々決勝前の時点で100以上のVAR介入が記録され、
その恩恵を受けていた筆頭がアルゼンチン。それもそのはずで今大会のプロモーション用のビジュアルで必ず中央に大きくフィーチャーされていたのがアルゼンチンのリオネル・メッシ。
FIFAはスポンサー料、チケット代等全ての価格を対戦カードのクォリティを前提に定めており、FIFAとスポンサーにとっては、
どんなに試合レベルが高くても「チュニジア対エジプト」のような商業価値が低い準決勝、決勝であっては困るというのが本音。
例えレフリーとVARが露骨に不正ジャッジをしても、「勝ち残ったチームが次の試合を闘う限りトーナメントは続く」ことがFIFAが強気で試合をコントロール出来る最大の理由。
今大会は各国サッカー連盟や政府から記録的な数の正式抗議がFIFAに寄せられたけれど、FIFAが唯一言い分を受け入れたトランプ氏も「ワールドカップだけでなく、スポーツの正当性をぶち壊した」
と批判された1人。トランプ氏のFIFAへの圧力により出場停止が取り消された米国のストライカー、フォラリン・バログンは敗戦後、
「試合に出られると知った時は嬉しかったが、皆これが大きな物議を醸すのは分かっていた」と本音を語り、結局はチームの士気が衰えただけで、完全に裏目に出たのがトランプ介入。
そんなチームUSAに対して「また来年がある」と語ってサッカー音痴ぶりを露呈したトランプ氏には、「ワールドカップよりイラン情勢と物価高を何とかしろ」との声が国民から寄せられていたのだった。
そのトランプ氏との”ブロマンス”ぶりが批判を浴び続けたインファンティーノFIFA会長は、次回モロッコ、スペイン、ポルトガルが共同開催する2030年のFIFAワールドカップ100周年記念大会を
参加64チーム、128試合、44日間の開催で行う無謀な計画案を発表。そのうちの3試合はワールドカップのルーツである南米のウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイでの開催。
しかし長年の32チーム、64試合、開催期間1カ月のフォーマットが、今大会の48チーム、104試合、開催期間39日になっただけで「長過ぎる」、「試合が多過ぎる」と苦情が出る中、
商業主義に走ってそれをさらに拡大するのは大会自体の崩壊を招く無謀なプラン。
そんなインファンティーノ失脚を望むサッカーファン、サッカー関係者が多い中、インファンティーノとFIFAからの寵愛と特別待遇を受け続けたアルゼンチン代表とそのサポーターは、
今大会で最も評判を落とした存在。前述のように全試合で主審とVARからの優遇を受けたアルゼンチン代表は試合中の差別的な挑発が批判され、
サポーターは人種差別&ゲイフォビアのチャンティングが問題視され続けた結果、「レイシスト」とのレッテルを貼られ、特にFIFA公認の黒人インフルエンサー、IshowSpeedに対する
アルゼンチン・サポーターの差別的な罵倒やサルのジェスチャー、物を投げつけるマナーの悪さにはSNSで非難が集中。
それとは別にアルゼンチン・サッカー協会(AFA)には、詐欺および資金洗浄の疑いでFBIの捜査が入っており、AFAはフロリダの企業を介して3億ドル以上の放映権料やスポンサー契約金を
事業実態のない複数の企業に流した疑いがもたれて久しい状況。同様の捜査はアルゼンチン国内でハビエル・ミレイ政権も並行して行っているとのこと。
ちなみに極右のミレイはアルゼンチン最大のビジネス、プロ・サッカーを民営化し、自らが所有するサッカー・チームをリーグに食い込ませようとAFAと真っ向から対立。
そのミレイ政権が昨年秋の財政破綻に陥った際に、米国民の健康保険や住宅補助金を打ち切りながら200億ドルの援助行うほどミレイを気に入っているのがトランプ氏。しかし
FIFA&インファンティーノは対立するAFA寄りで、現在脱税の罪を問われているAFAプレジデントのクラウディオ・タピアは、2017年の就任以来、疑惑が囁かれながらもアルゼンチン・サッカーを裏から支えた人物。
もしアルゼンチンがワールドカップ2連覇を果たせば、タピアは「政府たりとも罪を問えないアンタッチャブルな存在になる」と言われるほど、アルゼンチンでは善悪までもがサッカー中心で回っているのだった。
最後に母国に帰国した各国サポーターに対して使われているのが ”FIFA 15” というフレーズ。アメリカには”フレッシュマン 15”というフレーズがあって、
これは親元を離れた大学のフレッシュマン(1年生)が、好き勝手な食生活をしているうちに15パウンド(6.8キロ)体重が増えることを意味する言葉。
”FIFA 15”はワールドカップでアメリカに滞在して、アメリカ人の食生活をしているうちに15パウンドとは行かなくても体重が増えてしまうことで、
勝ち進んだチームのサポーターほど体重が増えているはずと指摘されています。
来週のこのコーナーはお休みをいただきます。次回更新は8月8日となります。いつも長文のご愛読ありがとうございます。
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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