僅か5日間、ホワイトハウス史上最短の報道官キャリアを10月16日に終えたのがケイティ・ザッカリア。
カリフォルニア在住の4児の母で、2024年から極右メディア「ニュースマックス」でコメンテーターを務めた彼女は、今年2月に国土安全保障省の広報担当副次官補に任命され2週間で辞任。
6月からはトランプ・メディア&テクノロジー・グループで広報アドバイザーを務め、10月5日に電話で通達されたのがキャロライン・リーヴィットに続く第37代ホワイトハウス報道官に任命されたニュース。
就任期間よりも1日多い6日の準備期間を彼女は会見リハーサルや資料閲覧よりもデザイナー・ワードローブ構築と、フィットネス企業でマーケティングを担当した時代に公開した
ビキニ・ショットの削除に費やしたと言われ、今や伝説となった僅か14分間の初記者会見のための準備は24時間以下。
初会見では終始緊張で震え、口調もたどたどしく、記者からの質問には3つしか答えず、それらは全てFOXニュース等、親トランプ・メディアからのもの。
結局は司法試験に落ちながらも、自らを法廷弁護士と名乗った経歴詐称が問題視されて辞任に追い込まれたけれど、そのあまりにスピーディーな辞任劇を
巧妙に画策したと言われるのが、ザッカライア就任に際してトランプ氏から助言を求められなかったスージー・ワイルズ大統領首席補佐官。
ワイルズ補佐官は、未経験かつ能力不足でまともに話せない彼女の就任には反対で、初会見直後に
ホワイトハウスが出した「報道官としてポディウムに立つのは厳しい。彼女は良いスタートを切れなかった。早急に改善されなければスカラムーチの記録を破ることになるだろう」という、
厳しいSNS投稿もワイルズ補佐官の差し金。ちなみにスカラムーチとは第一期政権下で僅か11日で辞任したアンソニー・スカラムーチ報道官で、
元ゴールドマン・サックスの金融畑の彼は報道官就任前からよく知られた存在。記者達からは「ムーチ」のニックネームで親しまれ、ザッカライアとは好対照の存在なのだった。
ケイティ・ザッカライア辞任の直接のトリガーになったのは、大不評の初会見後に彼女が出演したFOXニュースの番組「Hannity/ハニティ」のインタビューでの彼女の発言が
あまりにお粗末で、能力の無さをさらけ出したため。FOXニュースは言わずと知れたトランプ氏のマウスピース・メディア。「ハニティ」のホスト、ショーン・ハニティはその中でも
最も親トランプ派で知られるキャスター。記者会見が不評だったザッカライアの”イメージ挽回を狙って”、彼とのインタビューをセットアップしたと言われるのがホワイトハウス、すなわちワイルズ補佐官のチーム。
ワイルズ補佐官は、台本の無いインタビューでザッカライアが醜態をさらすことを先読みして番組出演を予定させたと言われ、その通り大失態を演じたことを悟ったザッカライアは、
番組出演直後にショーン・ヘネシーのSNSアカウント・フォローを止めたほど。
そしてザッカリアの辞任を前後して明確になったのが第二期政権発足以来、最も信頼されてきたワイルズ補佐官をトランプ氏が解任したがっている様子。
ワイルズ補佐官は、トランプ氏とイーロン・マスクが未だ”ブロマンス”と呼ばれるほど良好な関係だった時期から、ホワイトハウス内でケタミンを服用しては奇行に走るイーロン・マスクを嫌い、
この時点ではワイルズ補佐官側についたのがトランプ氏。しかしトランプ氏は共和党が劣勢な中間選挙で多額の資金を注ぎ込めるマスクが再び必要になったのに加え、ワイルズ首席補佐官はトランプ氏のおむつ係兼
”肉体関係の無い愛人”と噂されるナタリー・ハープを危険視してきた人物。
”ヒューマン・コピー・マシーン”のニックネームで、トランプ氏をおだてる報道を中心に自分が拾った情報をプリントアウトしてはトランプ氏にフィードしてきたナタリー・ハープは、今や記憶力、集中力が衰えたトランプ氏の頭に入る情報をコントロールする存在。ザッカライアの就任をトランプ氏に薦めたのもハープと言われ、実際に短い就任期間中のザッカライアとハープの関係は極めて良好。
ハープはトランプ氏に対する自分の影響力を理解する人間とは良い関係を築くことで知られる存在。
トランプ氏はワイルズ補佐官解任に向けて、支持者に後任人事の助言を求め、水面下で動いているつもりであったものの、それが政治メディア「ポリティコ」のニュースレターで暴露されたことで大激怒。
トランプ氏側もワイルズ補佐官とそのチームもこの報道を否定するのに躍起になっていたのがザッカライア就任期間。
しかしワイルズ補佐官解任間近の噂をきっぱり肯定したのが、ザッカライアの初記者会見で彼女が唯一まともに記者に語ったニュース、元トランプ・ジュニアの婚約者でギリシャ大使の
キンバリー・ギルフォイル辞任に関わる中心人物、エリック・デターズ。かつて共和党下院議員にも立候補したトランプ氏の大口ドナー、デターズは
ギルフォイルのトランプ政権への影響力を利用してビジネス拡大を目論んだものの、成果が出ない割にはギルフォイルのアメリカン・エクスプレス・カードの10万ドルの支払いの肩代わりを求められたことを公に暴露。
ギルフォイルがギリシャ大使としてEU諸国のエネルギー関連のロビーストと頻繁にコンタクトしてはアメリカ産石油の売り込みを行い、それを通じた利益着服を目論んでいた様子と共にワイルズ解任が近いことを明言。
さらにこの時囁かれたのが、ナタリー・ハープがトランプ政権で最も嫌われている高官、スティーブン・ミラーとある種の派閥を形成し、ワイルズ解任を待ち望んでいるニュース。
スティーブン・ミラーはホワイトハウス政策担当副首席補佐官で、共和党議員からも嫌われ、好感度ゼロであるものの、ワイルズ解任後の次期首席補佐官には最も近い存在。
ケイティ・ザッカライアの就任、辞任劇はワイルズ首席補佐官と、ミラー副首席補佐官&ナタリー・ハープの勢力争いの一部であり、彼女の史上最短任期は、
ホワイトハウス内の勢力図を露呈しながら、政権関係者が政府とのコネクションを求める富豪と癒着し、金銭の支払を受ける様子のごく一部を露呈。
更にザッカライアは辞任時にトランプ氏に感謝の言葉を述べるSNSポストを行い、それがトランプ政権が国民に知られたくないある事情を露呈してしまう、事実上の自爆投稿になるのだった。
ザッカライアは辞任に際して大統領執務室でのトランプ氏との2ショットをSNSに投稿。その写真のトランプ氏のデスクの上でボカしが入った状態で写っていたのが
ワシントンDCの歴史ある公共ゴルフ・コース、イースト・ポトマックの改修案と思しき書類。
ザッカライアは後にこの写真を自分の家族とトランプ氏のスナップに入れ替え、その写真では計画書が塗り潰されていたことから
メディアと国民の関心は彼女が何を隠そうとしていたのかに集中したのだった。
ワシントンDCには3つのゴルフ・コースがあり、その中でもイースト・ポトマックは川に囲まれた景観が美しく、僅か20ドルで9ホールのラウンドが楽しめる地元市民の憩いの場。
そこをプロ・トーナメントが開催出来る世界的カントリー・クラブに大改修しようと計画したのがトランプ氏。
しかし公共施設をプロと金持ちのためのゴルフ・クラブにコンバートするこの案には地元民が猛反対。トランプ政権司法省はこの計画はあくまで未定で、開発前には必ず裁判所の許可を得ることを約束。
ところが10月10日、コロンバス・デイの連休直前の金曜夜にトランプ政権は「コースのメンテナンスの一環」と偽って400本以上の樹木を伐採。
引き続き「改修プランが未定」であることを理由にこれが工事着工ではないと主張したものの、トランプ氏自身が自らのSNSで著名建築家のトム・ファジオによって改修計画が策定され、
11月15日から15ヶ月間にわたる全面改修のためにイースト・ポトマック・ゴルフ・コースを完全に閉鎖することを投稿。
この食い違いを受けてワシントンDCの裁判所は工事差し止めを命じ、トランプ政権司法省が「判事にその権限は無い」と訴えを起こし、
法廷闘争に発展するところであったけれど、この時点で同問題について報じるメディアはゼロ。
既にホワイトハウスのボール・ルーム建設、ケネディ・センンター解体改築&改名、ワシントン・モニュメントの新しいアーチ建設など、国民が反対する税金無駄遣いプロジェクトを複数抱えている
トランプ政権は、ゴルフ場開発も公に隠蔽したまま工事着工に乗り出し、ホワイトハウスのイーストウィングのように一度取り崩してしまえば、
その後の作業を進めない訳には行かない状況に持ち込めると判断。それを進めている真っ最中に、計画を白日の下に晒すきっかけを作ったのがザッカライアの辞任スナップ。
アメリカ国民の大半は、派手さは無いものの歴史と品格があったワシントンDCがトランプ氏のアグリーで下品な成金趣味で埋め尽くされ、
それに困窮する国民の血税が使われることを何より嫌っているのが現状。ケイティ・ザッカライアは僅か5日間の任期ながら、
トランプ政権内の複数の内情を露呈するきっかけをもたらしており、その意味ではアンチ・トランプ派にとって彼女は
「有益な報道官であった」という皮肉さえ聞かれているのだった。


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