Oct 25 ~ Oct 31 2026

"Brewers Means Blue Wave?"
ワールドシリーズ・チャンピオンで占う中間選挙の行方!?


 今週のアメリカは当然のことながら11月3日に控えた中間選挙関連の報道が多かったけれど、 国民が最もこだわる2つの選挙争点は、「Affordability(アフォーダビリティ)/物価抑制」と、「Corruption(コラプション)/汚職」。 これまで政治家叩きの材料にはなっても、国民の問題として捉えられたことが無かった「汚職」が、戦争終結やエプスティーン疑惑、データセンター建設よりも優先事項になっているのは政治専門家も驚く事態。
 それもそのはずで第二期トランプ政権下で、毎日のように報じられてきたのがトランプ政権、トランプ・ファミリー絡みのインサイダー取引、賄賂、マネーロンダリング、闇取引。 イラン戦争が終わらないのもトランプJr.とエリック・トランプが連邦政府や国防総省のコントラクトを獲得した防衛関連企業、ドローン企業、銃器関連企業の投資家、株主であり、 トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナーは自分の投資ファンド”アフィニティ”を通じてイスラエル最大の武器メーカーを含む軍事関連9社に投資するフェニックス・ファイナンシャルに巨額の資金を投じており、 トランプ・ファミリーは戦争が長引けば長引くほど大儲けの仕組み。そのクシュナーがスティーブ・ウィットコフと共に”特使”として終わらせたくない戦争の和平交渉を担当し、「素人外交では和平交渉が纏まる筈はない」という世間常識を逆手に取って堂々と続けているのが利益相反。それ以外にもクシュナーはアルバニアの全土に広がる抗議活動の発端となった現地政治家と結びついた保護区域のリゾート開発疑惑の中心的存在。トランプJr.とエリック・トランプは米国支援で進めるカザフスタンの世界最大級未開発タングステン資源開発事業の70%を握る企業に絶妙のタイミングで投資、 トランプ氏は富豪犯罪者に対して寄付と引き換えに恩赦を連発し、暗号通貨事業でも5億ドル以上を儲けるなど、汚職疑惑を挙げたらきりがないほど。さらにはトランプ氏の任期終了後に建設される予定の大統領記念図書館への寄付として、ABCニュース、メタ、パラマウントらが支払った訴訟和解金、合計約6300万ドルが現在使途不明で行方が分からなくなっており、日本のソフトバンク・グループが5000万ドルを寄付した2カ月後に同社のデータセンター用地リースをトランプ政権が発表したこと等も含めて、民主党の追求対象となっているのだった。



ブリューワーズのワールドチャンピオンが意味するものは?


 2026年のワールドシリーズは、ミルウォーキー・ブリューワーズが1982年以来の44年ぶりのワールドシリーズ出場で、初チャンピオンに輝いたけれど、 メジャーリーグはNFL、NBAに人気を奪われて久しいとは言え、ワールド・シリーズに国民の関心が注がれる傾向は健在。  アメリカ国民はワールドシリーズに限らず、スーパーボウルでも、NBAファイナルでも景気が良い時は、強い歴代チャンピオン・チームを応援し、 景気が落ち込むとアンダードッグが時代の流れをひっくり返すような勝利を望むと言われ、 ワールドシリーズは毎年11月第1週目火曜日に行われる大統領選、中間選挙、州知事&市長等の選挙の直前に勝敗が決まるとあって、選挙結果や その後の政権動向を占う指針として捉える人も多いとのこと。
 昨年のワールドシリーズ、LAドジャースVS.トロント・ブルージェイズの対戦は、アンケート調査でドジャース・ファン以外のアメリカ人の84%が応援していたのがカナダのブルージェイズ。 そうなるのは共和党支持者はブルー・ステート、カリフォルニアが嫌い。野球ファンは有力選手をお金で買い漁る金権野球のドジャースが嫌い。 民主党支持者はトランプ政権が、米国にとって最も信頼出来る友好国である隣国カナダに膨大な関税を掛け、”51番目の州”と馬鹿にしたことに腹を立て、 親カナダ感情の高まりからブルージェイズを応援。結果はドジャースがワールド・シリーズ2連覇を果たし、 一部で聞かれたのがトランプ政権の金権政治が2026年も続く予測。しかし直後に行われた選挙では、 民主党がドジャースのユニフォーム・カラーを反映したブルー・ウェイブを巻き起こし、13の州知事&市長選挙で全て勝利を収め、地方議会でも数多くの議席を獲得。マイアミでは 約30年ぶりに民主党市長が誕生し、NYでは民主党のゾーラン・マムダニが初のイスラム教徒市長になったのは記憶に新しいところ。

 時を遡って2016年、トランプ氏が大統領に初当選した直前に108年ぶりのワールド・チャンピオンに輝いたのがシカゴ・カブス。そしてその直後からSNS上に溢れたのが、 当時の民主党有力候補、ヒラリー・クリントンを破ってトランプ氏が当選する予測。 というのは1989年公開の「バック・トゥ・ザ・フューチャー・パート2」の中で描かれていた2015年のワールドシリーズでシカゴ・カブスが優勝していたためで、 映画の中で当時大成功を収めていたのが、1作目に暴君的虐め役で登場したビフ。そしてビフのキャラクター・モデルであったのが他でもないトランプ氏。 そのため「シカゴ・カブスがチャンピオンになるのなら、トランプの勝利だ」という予測が本当に当たってしまったのが当時。
 今年のブリューワーズの初優勝は選挙を占う象徴的な指針であるかは定かではないけれど、年俸が安い、若く優秀なプレーヤーを集めたブリューワーズがシーズンを通じて ベースボールの世代交代を感じさせただけに、既得権益を握る年寄世代と若い世代の入れ替え、そしてブリューワーズのユニフォーム・カラーのブルー旋風(民主党)が再び吹き荒れることを望む声が多いのだった。



トランプ氏の余命はMAGAの余命!?


木曜の時点で先行投票を済ませた有権者は4200万人と言われ、劣勢の共和党は トランプ氏はもちろん、ヴァンス副大統領、ルビオ国務長官、ロバート・F・ケネディJr保健福祉長官まで駆り出して 候補者の応援演説をする異例の体制。
 しかし会場は2024年の大統領選の際とは比べ物にならない小さい規模で、その少ない会場が埋まらないのが今回の選挙。 トランプ氏の演説もかなり支離滅裂になってきており、今週にはトランプ氏のマウスピース・メディア、FoxニュースやNewsmaxさえトランプ氏のテキサス州での演説のライブ中継を見合わせているのだった。 そのテキサスでのスピーチで、トランプ氏は共和党候補者、ケン・パクストンの名前を ”ケン・パー”としか言えず、 その後のサウス・キャロライナ州の演説では「黒人やユダヤ人でアブドル(ミシガン州のイスラム系民主党上院議員候補)に投票する奴は狂っている。お前ら(黒人やユダヤ人)はそもそも狂ってる」というあり得ない発言が飛び出す始末。選挙戦終盤でトランプ氏が見せた様子にその体調悪化を指摘する声は多く、週末に行う筈だったカンサスとアイオワでの集会を一度はキャンセル。 しかし再び開催を発表し、トランプ氏は「体調は万全」と語っているのだった。
 そんな選挙終盤戦で誰もが悟ったのが、現政権とMAGAがトランプ氏1人の存在に大きく依存していること。たとえ演説のクォリティが劣化しても トランプ氏にはまだ支持者を惹きつけるカリスマがあるのに対して、ヴァンス副大統領、ルビオ長官、RFKジュニアらは応援演説が裏目に出る好感度の低さ。 特にヴァンス氏のジョークは痛々しいほどに滑ることで有名。
 既にアンチ・トランプ派は民主党が大勝した場合、負けを認められないトランプ氏がどうやって結果を覆そうとするかを 危惧し始めているけれど、アメリカ政治の凄いところは、これだけ巨大で人種もバラバラな国なのにトップが入れ替わるだけで 国全体がその政策に応じて良くも、悪くも変化すること。NY市にしてもマムダニ市長が就任してからの大きな改善は市民の多くが感じるところ。
 全米各地では記録破りの先行投票が行われており、過去21カ月の金権政治や物価高、戦争に嫌気が差した有権者が その意思を明確にする様子は、政治を自分の問題として捉える民主主義が根付いた社会を感じさせるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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