今週はアメリカとイランが戦闘終結暫定合意の覚書に署名したけれど、その内容は2015年7月、オバマ政権下でアメリカを含む6カ国(米、英、仏、露、中、独)とイランとで結ばれた
イラン核開発協定に劣るもので、最終的に3兆ドルに達すると言われる戦費を出してまで手に入れた価値が無いと言われる成果。しかし金曜にイスラエルが南レバノンを攻撃したことで、
週末にスイスで予定されていた正式な調印式はキャンセルされているのだった。
とは言っても今週のアメリカ国民の関心、及びメディア、SNSのフォーカスが集中していたのは3つのスポーツ・イベント。その1つは先週日曜のトランプ氏の誕生日に開催されたUFCマッチ。
7戦行われた試合内容や結果に関心を払う人は皆無で、物議を醸したのがファイターの1人が試合後のリング上で「ミシェル・オバマは男だ」と叫んだこと。加えてトランプ氏の次男、エリック・トランプがUFC関係者に
「試合結果に賭けたいんだが、どれか八百長のマッチはある?」と尋ねたやり取りがSNSで明かされたこと。
残りの2つのスポーツ・イベントは53年ぶりにNBAチャンピオンに輝いたNYニックスとその祝勝パレード、そしてワールドカップであるけれど、
フランスVS.セネガル戦をメットライフ・スタジアムで観戦していたニックスのプレーヤーがジャンボ・スクリーンに映し出された途端、スタジアム内はニックス・チャンティングで盛り上がっており、
ニューヨーカーのワールドカップ熱にエンジンが掛かるには少し時間が掛かりそうな気配なのだった。
今回のワールドカップはインバウンド観戦者が通常より少ないとは言え、欧州諸国のサポーターがSNSに多数の投稿をしており、
その中に見られたのが「高いバッグやジュエリーを付けた女性が1人で街を歩いてもひったくられない」、「夜中でも1人で街を安全に歩ける」、「ゴミだらけかと思ったら街がキレイだ。落書きも無い」
とアメリカが予想外に治安が良く、街が清潔なことに驚くリアクション。また食事のポーションが大きいのは想定内とは言え、その美味しさは旅行者にとって完全に想定外。
コストコやウォルマートの巨大さにに驚き、そこでほのぼのと買い物をするアメリカ人家族の様子も彼らのイメージとは異なるものだったよう。
逆にその投稿を見たアメリカ人が 「これまで自分達は一体世界からどんな風に誤解されていたんだ?」と首を傾げているのが現在。
そのためワールドカップを機にアメリカ本来の姿をアピール出来ることを歓迎する声は多いけれど、
各国サポーター達のアクティビティもメディアとSNSで大きく取り上げられていて、現時点で最も話題を提供しているのは「タータン・アーミー」の異名を取るスコットランドのサポーター。
ボストンのバーやレストランでは、彼らのお気に入りのビール、サミュエル・アダムスが完売状態で、
彼らはMLBのレッドソックス戦、ヤンキーズ戦にも姿を見せて、抜群の存在感を発揮。
さらにはジョン・デンバーの往年のヒット曲「Take Me Home, Country Roads」をスコティッシュ訛りで大合唱するビデオを投稿。これにはアメリカ人が大喜びで、現在ボストンは
「ニュー・スコットランド」と改名されるほどの大センセーション。彼らが大勢で移動出来るのは、小学校の夏休みに着眼して、スクールバスを格安で何十台もチャーターしているため。
それ以外にもノルウェイのサポーターのバイキング・ロウ(船漕ぎ)、イングランド・サポーターがジュード・ベリンガムの活躍を讃えて「ヘイ・ジュード」を大合唱する様子等が
ヴァイラルになっているけれど、全般的にVISA取得に問題が無く、自国通貨に対してドルの価値が下がっている欧州からサポーターが大挙して押し寄せており、
ワールドカップだけでなく、様々なアクティビティを楽しむ様子が連日SNSに投稿されているのだった。
そのVISA問題は今大会に大きな影を落としていて、イラン・チームはスタッフにもサポーターにもVISAが下りず、孤独な闘いを強いられており、
事前にFIFAに「メキシコかカナダに試合開催地を移して欲しい」と要請したものの、FIFAは「サッカーによって世界平和を訴えるべき」というキレイ事で取り合わなかったとのこと。
またソマリア人のレフリーは、米国VISA、FIFAからの必要書類を全て持参したにも関わらず、入国管理局が同じ名前の人物がテロ組織メンバー・リストに入っていることを理由に。11時間の尋問後に入国を拒否。
FIFAは彼の給与を保証しながらも、入国の手助けはしない姿勢。 さらに同情を集めたのは、今大会初出場のカーボヴェルデが 優勝候補のスペインを相手に歴史的な引き分けに終わった試合で、
27本ものシュートを止めた40歳のゴールキーパー、ヴォジーニャの母親のVISAが下りず、息子の雄姿をスタジアムで見ることが出来なかったこと。
試合後にヴォジーニャのインスタ・フォロワーは5万人から1600万人に膨れ上がっており、母親は民主党ハキーム・ジェフリーズ下院院内総務が動いたお陰で今週金曜に無事アメリカに入国しているのだった。
今大会は、開会式早々 ガラガラのスタンドが話題になっていたけれど、高過ぎるチケット代のせいでメキシコでは
「かつてワールドカップは庶民のイベントだったが、今ではF1レースのようなエリート層のイベントになってしまった」と嘆く声が圧倒的。
でも多額を投じている割には、カナダの開会式では巨大なFIFAのトロフィー像が剥がれ落ち、メキシコの開会式では南アフリカのフラッグ・ベアラー(旗手)が フィールドのプロテクト・カバーで足を滑らせて転倒。
一方、チームUSAのマウリシオ・ポチェッティーノ監督は、今年3月にワールドカップ終了後も監督を続ける可能性を示唆していた割には、
開幕直前の5月半ばに ACミランからの監督就任依頼のミーティングに参加したことが大きく報じられている有り様。
今大会で初めて導入されたハイドレーション・ブレークは、選手にもTV視聴者にも大不評で、試合のエキサイトメントを中断されて腹を立てたスタジアムのファンからも、
「FOX(米国の放映局)のTVCMは未だ終わらないのか?」といった野次が飛び交っていたのだった。
今大会開幕直前に、私のアメリカ人の友達から送られてきたのが「息子達が今回の日本は凄く良いチームだから、かなりいい所まで行くはずだと言っている」というテキスト・メッセージ。
実際にSNSの海外のファンの書き込みを見ていると日本チームに対して「Most Dangerous Underdog」といった表現で、他国と異なるフォーメーション、
ボール・ポゼッションが短いにもかかわらず、確実に得点に結びつける手法など、「ブルー・サムライ」を高く評価するコメントで溢れているのが今回。
日本サポーターに関する投稿は、試合後のゴミ拾いに関するものが群を抜いて多く、そのリアクションとして多かったのが日本の国民性やカルチャーを讃えるコメントの数々。
同じくヴァイラルになっていたのが オランダ戦で引き分けた後に、オランダの「オレンジ・アーミー」に胴上げされる日本サポーターの姿。
加えて海外ファンが指摘したのがFIFAが日本チームに提供した練習用フィールドのコンディションの劣悪さ。日本の企業スポンサーが1社も無いせいか、
イングランドやスイス等には富裕層が通う私立校などの整った設備と良好なコンディションのフィールドが提供されたのに対して、日本にあてがわれたのは
周囲が雑草だらけで、芝の色も褪せた寂れたフィールドで、海外ファンがFIFAの日本冷遇に腹を立てていたのだった。
アジア人差別については、開幕早々メキシコのスタジアムで 韓国人インフルエンサーの背後でメキシコ人男性が吊り目のジェスチャーをしたことが大問題となり、男性が職場から解雇されたのは
日本でも報じられた通り。そのメキシコでは、2018年大会で韓国がドイツを2-0の大番狂わせで破ってくれたお陰で、メキシコがノックアウト・ステージに進出して以来、韓国チームとそのサポーターは「アミーゴ」。
今週木曜の直接対決の前夜には、両国のサポーターがPSYのヒット曲「ガンナムスタイル」で踊り狂う様子がSNSに投稿されていたのだった。
そのメキシコはKポップの世界5番目の市場でもあり、メキシコの開会式ではNetflixの「K-POPデーモン・ハンターズ」のヒット曲「ゴールデン」でオスカーとグラミーを受賞したEJAEが、今大会の公式アンセム「DNA」を披露。 Kポップ界隈ではEJAEに加え、アメリカの開会式でブラックピンクのリサが公式アンセム「ゴール」のパフォーマンスを見せ、決勝ハーフタイムにBTSが出演するとあって、
「K-Pop Takeover FIFA World Cup!」と盛り上がっているけれど、肝心のサッカーについてはFIFAとレフリーが欧州と南米を優遇し、引き続きアジアとアフリカを差別しているという声が圧倒的。
大会直前にイエロー・カードの規定を変えたのも、欧州と南米のスタープレーヤーを反則で失わないための配慮と言われるけれど、今大会はFIFAが金儲け主義に走った結果、
開催期間が長く、試合数が増え、しかもアメリカの天候は今週だけでも竜巻とトロピカル・ストーム、マイアミ・エリアでは珍しく山火事に見舞われ、これからは猛暑の中での闘い。
そのためフランス、アルゼンチンといったエリートチームのガス欠が見込まれ、これまでに無くアンダードッグにチャンスがあると言われる中、
FIFAは過去に物議を醸した問題レフリーを今大会でも多数起用。トーナメントが進めば進むほど、アンダードッグへのアンフェアなジャッジが増えることは既に織り込み済みなのだった。
その一方で今週サッカー・ファンをさらに怒らせたのが、FIFAがプロトコールを破って
「トロフィー授与後のセレブレーションへのトランプ大統領の参加を認める」という報道。
同様の光景は、昨年アメリカで開催されたクラブ・ワールドカップでも見られ、勝利したチェルシーのプレーヤーはトロフィーを掲げる瞬間もトランプ氏がステージ上に居座ったことに困惑し、
チェルシーのホームページに掲載されたのはトランプ氏を削除した写真。
しかも驚くべきはFIFA会長ジャンニ・インファンティーノが、クラブ・ワールドカップ・トロフィーを欲しがったトランプ氏にオリジナルを贈呈し、勝者のチェルシーにレプリカを授与したこと。
その上にFIFA平和賞を授与したインファンティーノは、「見苦しい」と評されるほどトランプ氏の言いなり状態。
そんなサッカー・ファンのフラストレーションを掻き消すかのように、金曜のチームUSA対オーストラリア戦では、オーストラリアのサポーターの 「Aussie boys, We're on a bender. Donald Trump is a sex offender (オーストラリアのボーイズ、俺たちはどんちゃん騒ぎの真っ最中。ドナルド・トランプは性犯罪者)」というチャンティングがヴァイラルになっており、
今では「サッカーには興味がない」と言っていたアメリカ人にも「ワールドカップはメチャクチャ楽しい」と言わせるに至っているのだった。
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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