Apr 22 〜 Apr 29 2024

Protest, Birthright, META Up & Down, Etc.
抗議学生達の要求, 出生市民権の危機!?, メタの アップ&ダウン, Etc.


今週のアメリカでは NYで公判がスタートしたトランプ氏の刑事裁判が大きな報道になっていたけれど、 それよりも報道時間が割かれていたのは、NYの名門コロンビア大学で 親パレスチナ学生による 反イスラエル・デモが更に勢いを増したニュース。
今週までに学生達はキャンパス内にテントを張って陣取るまでに抗議活動の規模を拡大。 週明けから大学の授業はリモート・クラスになり、ユダヤ系の学生の多くはパスオーバー(過越祭)の休暇と 安全目的を兼ねてキャンパスから離れていたとのこと。 学生の親達からは大学側に授業料払い戻しの要求が寄せられた一方で、 コロンビア大卒のユダヤ系大口ドナーが次々と寄附金打ち切りを通達。 NFLニューイングランド・ペイトリオッツのオーナー、ロバート・クラフトも多額の寄付金打ち切りを発表した1人。
親パレスチナ・デモはNYU、イエールを含む、全米の大学で起こっており、その都度50〜150人前後の逮捕者を出していたのが今週。 イスラエル寄りのメディアでは、抗議学生達をテロリスト扱いする論調も見られていたけれど、 警察が出動したことで、沈静化どころか益々拡大していたのが親パレスチナ系のデモ。
そのメッセージは基本的には停戦要求であるけれど、コロンビア大学では学生達が イスラエルによるパレスチナ侵攻から利益を得ている企業の株式を、 大学の資産ポートフォリオから売却するよう要求。その企業の中には兵器製造メーカーに加えて イスラエル政府にクラウド・サービスを提供するグーグル、アマゾンといった顔ぶれも含まれており、 1980年代の大学キャンパスで アパルトヘイトに反発した学生達が、南アフリカと取引する企業のボイコットを打ち出したムーブメントを彷彿させていたのだった。



アメリカ政府によるビジネス・ブレーキ!?


今週から遂にアメリカで始まったのがTikTok閉鎖に向けてのカウントダウン。 下院議会に続いて 上院議会が、「中国のバイトダンスが1年以内にTikTokを売却しなければ、 米国内で同アプリを禁止処分にする」という、”アンチTikTok法案” を圧倒的多数で可決。バイデン大統領が程なく これに署名をすることから、 アメリカ国内の1億7000万人のユーザーに少なからず打撃とインパクトをもたらすことが確実視されていたのだった。
もし売却が成立せずTikTokが禁止処分になった場合、アプリ・ストアからTikTokが消えたとしても、完全排除までには数ヵ月、場合によっては数年が掛かると見積もられ、 そのプロセスで見込まれるのがライバル・アプリへのユーザー移行。
最もその恩恵を受けると言われるのはフェイスブックの親会社 METAで、TikTokの米国広告収入を最大で60%吸い上げる見込み。 次いでグーグルが残りのうちの25%を得ると試算されるのだった。
インフルエンサー達は、TikTokの禁止処分を待たずして 既にインスタグラムのリール、ユーチューブのショートビデオという3種類のプラットフォームでビデオを投稿する傾向が顕著。 最も打撃を受けると思われるのはTikTok Shopでビジネスを行う約700万軒のスモール・ビジネス。 TikTok Shopは、今や中国のTemu、Shienと並ぶ人気オンライン・ショップで、買い物客のリピーター率では2社を抑えてトップ。 今ではTikTok Shopでしか物販をしていないスモール・ビジネスも多く、禁止処分はそんなビジネスにとって死活問題。
米国政府がTikTokを禁止するのは、同アプリが他のアプリよりも詳細な個人情報をスマートフォンから取得し、 それを中国政府とシェアしていると疑うためであるけれど、 TikTokに頼ってビジネスをするオーナー達は、「米国政府の介入こそが自分達のビジネスの最大の敵」とばかりに、 猛反発を見せていたのだった。

その一方で今週、FTC(連邦公正取引委員会)が起こしたのが、タペストリー社によるカプリ・ホールディングスの買収を阻止する訴訟。 タペストリーはコーチの親会社で、他にケイト・スペード、スチュワート・ウェイツマンを傘下に収めており、 カプリ・ホールディングスはマイケル・コース、ヴェルサーチ、ジミー・チューを傘下に収める企業。買収価格は8500万ドルで、ニュースが発表されたのは2023年8月のこと。 TikTokを通じたジェネレーションZへのアピールで業績を盛り返しつつあったタペストリーが、業績不振だったカプリを買い取るのは 双方にとってメリットがあるだけでなく、アメリカのファッション業界で久々の大型買収。 グッチ、YSL、バレンシアガ、ボッテガ・ヴェネタを傘下に収めるカーリング社や、ルイ・ヴィトン、セリーヌ、ブルガリ、ロエベ、ディオールを傘下に収めるLVMHを 追いかける ファッション企業が誕生する期待を集めていたのだった。
それに口を出してきたのが、通常ファッション業界には興味を示さないはずのFTC。 反対の理由は、コーチ、ケイト・スペード、マイケル・コースといった 知名度があるものの、一流ブランドよりも安価な存在が 買収によって1つの企業に纏まると、価格競争の必要が無くなる結果、価格が上昇し、消費者の利益を損なうと見込まれるため。 実際に、これらのブランドの売れ筋ラインは 似たような価格で、同じ消費者層を奪い合う関係。 消費者に手が届く価格維持のためには、競争関係が不可欠との見解を示しているのだった。
これに対してタペストリーのCEO ジョアン・クレヴォワセラ氏は、「FTCは今日の消費者とその購買動向を全く理解していない」と批判。 タペストリーとカプリは、「追随するブランドとの競争力を高めるために合併が必要である」と主張しており、両社ともFTCとは全面対決の姿勢を見せているのだった。 これらのブランドに興味が無い消費者は、「公正取引委員会が、わざわざ税金を投じた裁判で阻止するほどの合併?」という冷めた意見であったけれど、 FTCは「買収によって2社の生産プロセスが統合されれば、 両社の従業員にも損害を与える」とも主張。
消費者は合併によって価格が上昇すれば、買わないことで反発が出来るけれど、企業の従業員は合併によるレイオフに対して 成す術が無い訳で、 この買収ブロックは、消費者保護よりも労働者保護の主張がアピールしていたのだった。



出生市民権がアメリカから消える!?


ハマスVS.イスラエル戦争以来、支持率を落としているバイデン大統領にとって、それよりも大きな問題になっているのが移民問題。 バイデン政権になってからというもの、メキシコとの国境から米国入りする不法移民の数が急増したのは周知の事実で、 ハリス社が6251人のアメリカ人を対象に行った最新の世論調査で明らかになったのが、 その51%が不法移民の大量国外追放を支持しているという実情。
伝統的に共和党保守派、人種では白人、年齢層は上がれば上がるほど、不法移民に対して厳しい意見を持つけれど、 最新の調査結果によれば、民主党リベラル派、マイノリティ人種、若い層の間でも 不法移民に対するネガティブ感情が高まっており、大量国外追放を支持する声が急増していること。
この調査結果は民主党側の政策担当者を驚かせるもので、 今ではアメリカ国民の約3分の2が、「不法移民はアメリカにとって危機的な問題」と捉えているとのこと。 また国民の32%が「移民問題の責任がバイデン大統領にある」という意見を持っているのだった。
一方のトランプ氏は、第二期当選を果たした際には 「アメリカ史上最大規模の国内不法移民の強制送還作戦を実行する」と公約。 通常、アメリカ人は 既に米国に長年暮らした不法移民の国外追放には消極的であるけれど、 最新調査では 不法移民による犯罪、暴力に対する警戒感が高まっていることもあり、 トランプ氏が打ち出す強硬政策を支持する意見が急増中であるという。
それを立証するかのように、憲法修正第14条で保障されているバースライツ・シチズンシップ(出生市民権)、すなわちアメリカで生まれればアメリカ人という制度の廃止を支持する意見は、 民主党支持者の30%、共和党支持者の間では46%に上っており、この数値は過去最高。 バースライツ・シチズンシップ廃止は、トランプ氏が前政権時代から訴えてきた主張でもあり、トランプ氏が再選されれば、 保守優勢の連邦最高裁が覆しても不思議ではないとも言われるもの。 しかし多民族国家のアメリカでは、出生市民権を認めない場合、何をもってアメリカ人と見なすかを決めるのは至難の業と言われるのだった。
ところで、現在増え続けているのが中国からの不法移民。メキシコとの国境からアメリカに渡る中国人不法移民は2021年には600人程度であったものの、2023年には3万人以上にまでアップ。 いずれも中国政府によるのCovid-19政策で、自由と人権を弾圧され、職を奪われたという人々。特に増えているのが蛇頭と手を組んだメキシコのドラッグ・カルテルの手引きによって、 1人当たり日本円にして100〜200万円の手数料を支払ってアメリカに不法入国するケース。 バイデン政権は、そんな中国からの移民に対しては一気に強制送還するマス・デポーテーションの計画を打ち出しているけれど、 中国政府がその受け入れを拒否しており、中国との間に新たな火種を生み出しているのだった。



META、今週のUp & Down


今週火曜日に発表されたのがフェイスブックの親会社METAの最新四半期の業績。 そこで同社のAI開発支出が市場予想より数十億ドル多くなることが明らかになり、4月24日水曜の取引開始前のメタ株価は、前日終値から一時19%急落。 企業価値にして2000億ドル以上が失われた計算になっていたのだった。
投資家がメタのAI費用が嵩むのを嫌う理由は、METAの収益の98%を担っているのがデジタル広告で、 嵩み過ぎるAI出費は 少なくとも現時点では業績の足かせにしか映らないこと。 そして多額の出費の割には、METAがAI分野で他社をリードする存在ではないこと。 CEO マーク・ザッカーバーグは「AI開発には時間と費用が掛かる」として株主に理解と忍耐を求めていたけれど、 株主は一様に METAが社名変更に至ったメタヴァースよりは、AI開発を支持しているようなのだった。
そのメタにとって朗報になっていたのが、昨年夏のデビュー以来、話題性を欠いていた ”Thread/スレッド” が、 実は着々とユーザーを増やしていたこと。 スレッドは、イーロン・マスク買収後のツイッター(現在のX)でへイト・スピーチが急増し、ユーザー離れが起こったのを受けて、 METAがインスタグラムのサブアカウントとしてスタートした 競合プラットフォーム。
スタート直後はそのダウンロード数で記録を塗り替えたものの、ツイッターよりもトピックが平和で 人々の感情を逆なでしない分、話題性や リアクションが乏しいことから、一時は打ち上げ花火的なビジネスに終わるかと思われていたのだった。
ところが、今週の最新データによれば、スレッドは米国内のデイリー・ユーザー数で Xを常に上回るまでに成長。 月間ユーザー数については 未だ Xが優位を保っているものの、このままのぺースならば 追い抜くのは時間の問題とのこと。 もしそれが実現し、TikTokが禁止処分になれば、インスタグラム、インスタグラム・リール、スレッドという3サービスにより、 METAががソーシャル・メディアを独占する可能性が出てきているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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