Feb 25 〜 Mar 2 2024

Insta Parent, Rap Edutainment, TikTok, Etc.
虐待インスタ ペアレント, ラップで金融教育, TikTokとビジネス, Etc.


昨今のアメリカは株式市場が好調とあって、以前ならケーブルのビジネス・チャンネルで報じられていたような金融関連ニュースが メインストリート・メディアやソーシャル・メディアで大きく扱われる傾向が顕著。
先週のメイントピックになっていたのは、"モンスター級"とまで言われた2023年第4四半期の好業績を発表したエヌビディア。 売り上げは前年同四半期から265%アップ。同社時価総額は過去12ヵ月で1兆2000億ドル上昇し、 発表当日のエヌビディア株は16%以上アップ。そのエヌビディア株 3.5%を所有するCEOのジェンスン・フアンの個人資産はこの日だけで100億ドルアップ。 その総額が690億ドルとなり、世界長者番付の21位にランクされているのだった。
でも同じ日にエヌビディアの2倍に当たる32.9%の株価上昇を見せたのが同じ半導体メーカーのスーパー・マイクロ・コンピューター社。 年始から株価が2倍になっている同社は、この日の株価爆上げで一躍投資家の間で知名度を高めていたのだった。
そして今週の金融の話題が集中したのはビットコイン。週明けの5万900ドルから、今週の最高値が6万4000ドルを超えたビットコインは、今年に入ってから40%以上の上昇。 1月に認可されたばかりのビットコインETFは、既に史上最もサクセスフルなETFとなり、現在の上昇相場の原動力になっているのは そのETFのためにビットコインを1日5億ドルのペースで買い漁るブラックロックを始めとする大手金融機関。今週には新たにウェルファーゴ、バンク・オブ・アメリカ傘下のメリルリンチ、UBS等がビットコインETFの取り扱いを表明。 かつてアンチ・ビットコイン派だった大手金融機関の手のひら返しが続いているのが昨今。
そんな中、頑固なまでのアンチ・ビットコインの姿勢が災いして 年末のリタイアに追い込まれたと噂されるのがヴァンガード・グループCEO、モータイマー・J・バックレー。 ヴァンガードは、バックレーのリタイアまではビットコインを扱わない姿勢を貫くと見られるけれど、 この春にはビットコインが4年に1度の半減期を迎え、ブル相場のスーパーサイクルに突入する中、5月に見こまれるのがイーサリアムのETF認可。 ヴァンガードは頭が古い上層部のせいで、他社が膨大な利益を上げる様子を指をくわえて見ている状態が続くことになるのだった。



児童性的虐待者相手に我が子を差し出して儲けるインスタ・ペアレント


今週NYタイムズ紙がレポートしたのが、メタ傘下のインスタグラム上で 自分の子供をインフルエンサーやセレブリティにしようとする親達が、 子供達に代わってアカウントを運営するうちに、児童性的虐待者から多額の収入を得るようになり、事実上、我が子を売り飛ばす行為に及んでいる実態。
まともな親であればインスタグラムに子供の写真をアップする場合は、家族や親戚、友人に絞った公開で、子供のプライバシーを守りながらその成長ぶりを見て貰う目的に使うもの。 しかしNYタイムズのレポーターがリサーチ対象とした何千もの少女(稀に少年)のアカウントは、通常500人以上のフォロワーを擁し、 子供達が水着やレオタード等の身体にフィットし、肌を露出した衣類を着用した写真で溢れているとのこと。 そのコメント欄には、更なる露出やカメラ目線を要求するなど、子供達をグラビア・アイドルとして扱うものが多数寄せられているという。
中には毎月のサブスクリプション・フィーを請求して プライベート画像が閲覧出来るビジネスを展開して、年間10万ドル以上の収入を得ているアカウントもあり、 少女が着用したレオタードやチアリーダー・ユニフォーム等を売却したり、少女とのプライベート・チャット・セッションを販売して多額の利益を得るケースも多いという。 フォロワーたちは、自分達の行為が 社会的に責められることを熟知しているだけに、かなりの高額をあっさり支払う傾向が顕著。 そうやってイージー・マネーが入るようになると、最初は「子供の大学進学資金を稼ぐ」と言っていたような親でも、 欲に目がくらんで フォロワーからのリクエストをどんどん子供に強要するようになり、露出度の高い挑発的な写真撮影を行うなど、フォロワーに代わって子供達への虐待をするようになるのだった。
しかしフォロワーの方が親達よりも何枚も上手のようで、最初はおだてたり、金銭による誘惑で少女達のきわどい写真や着用した衣類を入手していても、 程なくそれが虐めや強迫に変わるのは全く珍しくないこと。入手した少女の画像をインターネット上にばら撒くと脅せば、学校の友人に知られたくない少女、家族や学校から責められたくない親達は、 それ以降、フォロワーが要求する写真を無料で提供するようになるのだった。
この問題は既に何年も前から指摘されてきたものの、児童性愛者を 彼ら好みの少女のアカウントに導くようにデザインされているのがインスタグラムのアルゴリズムは。 親会社のメタでは そんな少女達のアカウントで 1日平均50万件の不適切なメッセージのやり取りが行われていることを認識し、4万人のスタッフが 不適切アカウントをモニターしていると説明。しかし現時点で取り締まりの対象になっているのは、児童性愛者と疑われるフォロワー達をブロックしようとする保護者の方。 コミュニケーション歴が残らないソーシャル・メディア、”テレグラム”上の児童性愛者のグループチャットでは、 「合法かつ、簡単にチャイルド・ポルノグラフィが入手出来る手段」としてインスタグラムを絶賛する声が後を絶たないのだった。
とは言っても今週の報道で人々が驚愕したのは、自分の子供を危険にさらしながら 児童性愛者に餌付けをする親達の姿。 彼らの欲望が高まれば 辿り着くのは 常に「誘拐、監禁、殺害」のシナリオ。それだけに「インターネットを通じたコミュニケーションだから大丈夫」と思い込むのはあまりに浅はかであるけれど、 そうした浅はかな親達ほど、公開している写真の随所に子供のIDが特定できるような手掛かりをいくつも提供しているようなのだった。



ラップを聞きながら金融リテラシーを高める!?


ティーンエイジャーと言えば親を含む大人の言う事には耳を傾けない世代。 ましてや金融機関によるアドバイスは学校の授業より退屈で、まだまだ自分とは無関係と考えがち。
その一方でジェンZの後に控えているジェネレーション α(アルファ)である12歳を対象にアンケート調査をしたところ、約60%が「20歳になるまでにミリオネアになる」という アグレッシブな金融ビジョンを持っており、確実に言えるのは 若い世代ほど お金や生涯のファイナンシャル・プランについて楽観的に考えているということ。
教育機関では金融知識を教えない無いことから、子供達がお金儲けや貯蓄、ファイナンシャル・プランニングを学ぶのはもっぱら親世代から。 それもあって投資で老後資金を稼いだベビーブーマーを親に持つジェンZは、ジェンXやミレニアル世代よりも投資に熱心。 そして投資とは無縁の貧困層になればなるほど、親の世代も子供の世代も金融リテラシーが低く、十分な蓄えがないまま リタイア年齢を迎えて来たのがこれまでの世の中。 特に黒人貧困層は 54%が退職後の生活維持に必要な貯蓄を持っていないことが明らかになっているのだった。
しかし時代は変わって、これからはクリプトカレンシーやゲームファイ(収入が得られるウェブ3上のゲーム)の普及で、ティーンエイジャーでも親を超えるお金が稼げる時代。 昨年末にはクリプトカレンシー、ソラーナ系のコインのエアドロップで、17歳の少年が一夜にしてミリオネアになった例もあれば、パンデミック中のフィリピンでは ブロックチェーン・ゲームの先駆者、アクシー・インフィニティのプレイだけでティーンエイジ・ゲーマーが家を3軒買えるほど儲けたエピソードもあるのだった。 彼らは宝くじのように運で富を引き寄せた訳ではなく、前者の17歳の少年はエアドロップを受け取る条件を満たすための努力を毎日地道に続け、 後者のゲーマーは単にゲームだけでなく、そのプライズ・マネーを更にゲーム・コインに投資しており、しっかりしたプランとその実行、加えて若い世代ならではの 時代を読み取る嗅覚で手に入れた富。
若い世代がそうしたチャンスを生かすには、まずは手堅い貯蓄による足場固めと金融知識を学ぶことは不可欠であるけれど、 そうした教育が最も必要な貧困層ほど、お金について学ぶ機会が無く、彼らにとって富のインスピレーションになる存在と言えば、 実業家やウォールストリートのトレーダーではなく、ラッパーやスポーツ選手。大邸宅に住み、高級車を乗り回し、 ダイヤ入りのジュエリーをジャラジャラつけて、富を見せびらかすことがイメージ戦略になっている人々。 その結果、貧困層の若者ほど 稼いだお金で散財するように精神面がプログラムされてしまうようで、しっかり稼いだはずのNBA、NFLプレーヤーでさえ 多いのがリタイア後の破産。そのためリーグ側ではオフシーズン中の現役プレーヤーに金融教育のプログラムを無料で行っているほどなのだった。
こうした状況を問題視した大手金融機関TIAAが、かつて「Killing me softly」でメガヒットを飛ばした Fugees/フュジーズ のオリジナル・メンバー、ワイクリフ・ジョンとのタイアップでプロデュースしたのが「Paper Right」。 これはお金の問題を野放しにしてはいけないことや、財産を築く大切さを 若い世代にアピールする言葉とコンテンツで伝えるラップ・ミュージック。 このプロジェクトには ワイクリフ・ジョンプ以外にも、プシャ・T、ローラ・ブルック、カペラ・グレイ、フラウジェといった、若い世代が日頃からその楽曲をダウンロードしているラッパー達が加わっており、 1月のリリース以来、先週までに60万回のストリーミング再生数を記録。その収益は、高校教育を受けていない貧困層に 金融リテラシーと投資の原則を教える「ファースト・ジェネレーション・インベスターズ」という非営利団体に対する10万ドル以上の寄付になっているのだった。
ラップ・ミュージックの中で謳われるのは、それぞれのラッパー達が実際に経験してきた経済的困窮や、公営住宅での貧しい日々、そこから這い上がった後の経済的自由の素晴らしさ等で、 「貯蓄をして増やす、それも出来るだけ早く始めること」、「自分だけのためでなく、子供の世代のためにも財産を築く」といったメッセージが 若い世代に響くように盛り込まれているのだった。 これは、かつて日本のビジネスマンが経済の複雑な仕組みをマンガで学んでいたのに通じる部分があるけれど、 若い世代に学ぶ意志があっても、なくても、ラップ・ミュージックとして口ずさんでいるうちに潜在意識の中に浸透していくという点で、音楽を通じたアプローチは意識改革に繋がると期待されるもの。
事実、アメリカではカントリー・ミュージック・ファンが飲むアルコールと言えば、ほぼ100% ビールかウィスキー。その理由は聞いている音楽の歌詞にビールとウィスキーが頻繁かつ象徴的に登場するため。 またアメリカには ”クリスチャン・ロック” というカテゴリーが存在していて、その歌詞はキリスト教の教えを説きながら、神の存在を讃え、神に守られる喜びを謳うもので、 その洗脳効果はトラディショナルな讃美歌の比ではないと言われるのだった。
以前テイラー・スウィフトが大学のカリキュラムになっていることをこのコーナーでご紹介したけれど、 今後も若い世代が好むエンターテイメントを利用した 新しいフォーマットのエデュテイメント(”エデュケーション=教育”とエンターテイメントを合わせた造語)が増えて行くと見込まれるのだった。



TikTokインフルエンサーが最強な理由


パンデミック中に一気にブレークして以来、今ではファッション、ビューティー、ヘルス、エクササイズ、フード、ライフスタイル等、多岐に渡るトレンドの発信源となっているのが TikTok。
2024年2月の段階で、アメリカのTikTokアクティブ・ユーザー数は1億230万人。この数は2027年には1億2110万人に達すると見込まれ、 成長率も影響力もソーシャル・メディアの中ではトップ。
Pewリサーチが行った調査結果によれば、TikTokのユーザーは ひたすらビデオを観続けるものの、投稿しない傾向が顕著で、 18〜34歳という最もソーシャル・メディアでアクティブな世代でも、48%が一度もTikTokにビデオをアップしたことが無いのだった。 ジェンZのソーシャル・メディアというイメージが強いTikTokであるものの、投稿者の割合が最も多い世代は35〜49歳で、ユーザーの60%がビデオをポストしたことがあると回答。
TikTokユーザーが他のソーシャル・メディアよりも投稿をしない最大の理由は、コンテンツ制作に時間が掛かるためで、トップ・インフルエンサーになると僅か数秒のビデオの撮影に 数日を掛けることも珍しくないよう。それほどまでに難しいのが短くインパクトがあるビデオ・コンテンツの製作。 また成人ユーザーの平均的なフォロワー数は僅か36人程度で、これも他のソーシャル・メディアに比べて極めて低い数値。 そんなリアクションの少なさもビデオをポストする意欲が失せる要因になっているのだった。
TikTok上で公開されているビデオの98%をアップしているのは トップ25%のTikToker。 すなわちTikTokは、一握りのインフルエンサーの影響力が極めて大きいソーシャル・メディア。 トップ・インフルサーの投稿にアクセスが集中することが、TikTokからトレンドが生まれ易い要因になっているのだった。
現時点でTikTokがトレンドを超えて、ビジネスにも大きな影響を与えているのがレストラン業界。 2023年夏にはティーンエイジのTikTokerが、両親が経営するベトナム料理のレストランに閑古鳥が鳴いていて、 お客を待ちわびる両親を見守る切なさを投稿したところ(写真上左)、それがヴァイラルになり、途端に店が大繁盛というエピソードがあったけれど、 現在、レストラン・レビューを投稿する度に同様のインパクトをもたらしているのが 1700万人以上のフォロワーを持つフード・インフルエンサー、キース・リー(写真上右側の3枚)。 当初は自らが住むラスヴェガスのレストランを10点満点で採点するビデオを投稿していたいた彼は、後に黒人オーナーの優秀なレストランをサポートするための レビューで知られるようになり、今やそのレビューを全米に拡大。各州を周っては小規模かつ大衆的なレストランを紹介し、潰れかけた優秀店を大繁盛に導く救世主になっており、 それが ”キース・リー・エフェクト(効果)” と呼ばれて久しい状況。
しかし時には10点満点中4点という厳しいレビューもあり、厳しいレビューが続いたのが何とNY。というのも彼がレビューをしていたのが、俗に”ツーリスト・トラップ”と言われる 旅行ガイドには載っていても、ニューヨーカーが寄り付かないピザ・ジョイントやサンドウィッチ店であったため。彼のレビューのお陰で、アウト・オブ・タウナーが ”ツーリスト・トラップ” に無駄金を払うのを防げるとは言え、 NYの醍醐味といえるフードが紹介されていないことには 不満と懸念の声が聞かれていたのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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