Jan. Week 3, 2022
Law of Attraction
引き寄せの法則、本当に効果があるのでしょうか?


いつもこのコーナーを愛読しております。
2年ほど前から姉が満月のパワーとか、一粒万倍日や寅の日とかに こだわるようになり、私もその影響を受けるようになりました。 特に姉が凝り始めたのが「引き寄せの法則」で、私も姉から借りた本を読み、関連のYouTubeビデオも観て、過去数ヵ月の間、努めて引き寄せの法則を実践するように努めました。
私は物事をトライする前に「どうせダメだろう」と諦めてしまっていたり、欲しいものでも遠慮して譲ってしまったり、 自分の幸せを優先にするのは身勝手だと考えるところがあって、自分を押し出してくる人には否定的な考えを持っていました。 でも引き寄せの法則を学ぶうちに、「幸福を強く望まない心が、自分を幸せから遠ざけてきた」と反省するようになり、 指南通りに毎朝鏡の前で幸福を念じたり、自分の目票を明確にして、満月の夜に願い事を書いたりといろいろなことを実践してきました。 途中までは自分が幸せに向けて取り組んでいる充実感を味わったのですが、ある時、引き寄せのルーティーンがきっかけで ちょっとしたトラブルが起こり、それで頭を冷やしてみると引き寄せの法則を実践してからの方が、生活にしがらみが多くて、 変な事にこだわるようになって、かえって自分が弱くなったように思うことがありました。 そう自覚すると、引き寄せと称してやって来たことが、毎日の時間と精神の負担に思えてしまい、結果的には引き寄せの法則を全て止めてしまいました。

すると束縛から放たれたような自由な気持ちになって、夢や希望は叶っていなくても、肩の力が抜けたようなリラックスした気分を味わうようになりました。 その事を同僚に冗談っぽく話すと、「引き寄せの法則が性格に合っていなかったのでは?」と言われましたが、 超能力みたいなものを勉強している別の知り合いからは「引き寄せの法則に気を取られ過ぎて、自分の目の前にあるもっと大切なものに関心が注げなかったのだろう」と 分析されてしまいました。別の友達は「引き寄せの法則なんて、最初から何となく胡散臭い」とか、「自己啓発セミナーのお金儲けの手段」とも言います。
姉は今も 引き寄せの法則を信じていて、止めてしまった私を脱落者のように扱ってきましたが、「実際にどういう成果があった?」と訊いたらモゴモゴした言い訳が返ってきただけでした。

私は 因果応報は、行いが悪い人がそれなりの扱いを受ける様子を何度も見ているので信じていまが、 今回のことで引き寄せの法則が疑わしく思えるようになり、友だちが言うように 自己啓発本を売ったり、セミナーをする人達のお金儲けの手段のようにも思えてしまいます。 (因果応報にはそんなセミナーもありませんし...笑)
秋山さんは「引き寄せの法則」についてどう考えていらっしゃいますか。 もし秋山さんが引き寄せの法則を信じていらした場合、その実践方法や、私の何がいけなかったか等も教えて頂けたら嬉しいです。 急ぎませんので、是非アドバイス よろしくお願いします。

ー R -


引き寄せられないメソッド


私は引き寄せの法則は存在すると考えています。
ですがその効力は、一般に言われるような「お金持ちになりたい」、「成功を収めたい」といった 欲望や願望に対して働くのではなく、 あくまで自分に授かった運命を引き寄せ、それに向かって引き寄せられるパワーだと思っています。
人間にとって大切なことは、何をして どう生きるかであって、お金や成功はその過程で生み出される副産物です。 ビル・ゲイツやイーロン・マスク、故スティーブ・ジョブスなど、世の中で大きな成功を収めてきた大富豪にしても、 「XXXで世界を変える」、「XXXによって、こういう世の中を築く」といった大きなビジョンや理想に向けてアクションを起こしてきた訳で、だからこそ人や社会を動かし、 運も巡ってきた訳です。 本質を抜きにして、お金や成功といった副産物だけ追いかけるのであれば、引き寄せの法則が働くことはないと思っています。

自己啓発本やその手のセミナーの中には、自分の願望を唱える言霊の力や、自己暗示によって自分を信じることで引き寄せが可能になるとレクチャーする傾向が顕著です。 ですが自己暗示を唱える程度では人間の意識を根底から変えることは出来ません。 人間は日頃から語る言葉によって人間性が形成され、価値観も大きく影響されますが、それはあくまで無意識で話す言語であって、意図的に唱える言葉ではありません。
例えば、日頃から男女平等、セクハラ撲滅を謳っている男性でも、無意識のうちに「女のくせに」という言葉を遣うようであれば、その人の潜在意識には男尊女卑が脈々と生きています。 この場合、日頃唱える男女平等やセクハラ撲滅のスローガンが自己暗示であり、それによって形成されるのは大義名分的で付け焼刃の思考です。 それに対して 女性に腹を立てた時に口をついて出て来る「女のくせに」という本音に表れる男尊女卑の思考は言霊のパワーで形成されたもので、それこそが人間をコントロールしている深層心理です。 すなわち自己暗示などで 頭では理解したところで、長きに渡って形成された人間の無意識の思考を覆すことはできないのです。

「自分を信じる」ということについても、行動や実績、経験、克服の積み重ねによって可能になることで、 本を読んだり、自己暗示をマントラのように唱えることで実現するのは不可能です。 言葉の暗示や頭の思考で 「今日から新しい人生をやり直す」と心機一転で物事に取り組んだ場合でも、 新しい環境やルーティーンでの新生活を始めて「自分は生まれ変わった」と思い込んだ場合でもとしても、 不運なことが2つ、3つ続けばそんな気持ちは簡単に揺らいだり、萎えたりして、「何が悪いのだろう」という思考に逆戻りしてしまうものです。
行動や実績、経験、克服の積み重ね無しに 自信だけをつけようとするのは、土台の無い状態で家を建てようとするのと同じです。 言い方を変えれば、自信は徐々に自分の中から生まれるもので、つけられるものではありませんし、持とうとして持てるものではありません。 ですから私は、自信が無い人を励ます時には「もっと自信を持って」と 無いものを要求するよりというよりも、 「落ち着いて」、「大丈夫だから」、もしくは「最初さえ乗り切れば、後は何とかなるもの」というようにハードルを下げて励ます方が心に響くと思って実践しています。

結局のところ 人間は、自己暗示や信じる、念じるという程度で変われるほどシンプルな生き物ではないのです。 もしRさんが実践していらした引き寄せの法則が、こうしたメソッドに基づいたものであれば、効果を実感できなくても不思議ではないと思います。 むしろ効果が無いことを自覚して、自らお止めになったということは、Rさんが空虚な希望に惑わされず、ご自身に対する正当な判断力を持っていらっしゃることを意味しますし、 そういう現実的な人物の方が 何をトライしてもプラシーボー効果が少ないようです。
往々にして人間は 困っている時にすがりつきたいもの、楽に自分を幸福にしてくれるもの、自分を特別に扱ってくれたり、自分が特別だと感じさせてくれる存在に対して、 正当な判断力を失って、のめり込む傾向にあります。恋愛もその1つで、恋をしているうちは相手の欠点や問題点を察知しても、それを軽視したり、良いように解釈して、 自分にとって素晴らしい相手だと思い込もうとするのが人間です。 精神的に弱く、怠慢な人ほど、疑問を持つことを恐れたり、面倒がっているうちに 新興宗教や同等の信仰心を煽る団体、自己啓発やメンター・プログラム、恋愛など、洗脳効果があるものに対して 判断力を失い、一時的に自分の人生が好転した幸福感を味わいますし、自分の”信仰”を否定されると感情的なリアクションを起こします。
ですが何を信じようと、それだけで成功やお金がついて来ることもありませんし、他人の考えやルールにコントロールされた状態で幸せを掴むこともありません。 引き寄せの法則を学ぶだけで お金や成功が引き寄せられると考えるとすれば、それは人生に対する逃げや甘え以外の何物でもないと私は考えます。

本当に引き寄せをもたらすものは…

引き寄せの法則はアメリカでは2006年に「シークレット」という本がベストセラーになったのがきっかけで一般に広く注目を浴びました。 当時はまだオプラ・ウィンフリーが3大ネットワークの1つ、ABCでトークショーをホストしていて、私はたまたま彼女がこの本について取り上げたエピソードを観ていました。
その中でオプラが語っていたのが 「この本に書かれていること(引き寄せの法則)は当たり前だと思っていたので、まさか”シークレット”だとは思わなかった」ということでした。 すなわちオプラ・ウィンフリーは、誰にも教わることなく、自分が成功を収めることだけを信じて キャリアを歩み続けた訳ですが、 同じことは1980年代にスーパースターになったマドンナも、1990年代後半にレコード・デビューして以来、スーパースターになったジェニファー・ロペス、2000年以降に登場したレディ・ガガも語っていたことでした。 要するに彼女らはスターになることが自分の運命であると本能的に悟って、それを目標に前進し続けたことで 自分の運命を引き寄せ、運命に引き寄せられたのです。 自分とは無縁の運命を引き寄せようとした訳ではありません。

その意味で、引き寄せの法則を発動するには、まずは自分が生まれて来た理由や目的、すなわち運命を悟ることが大切です。 ちなみに運命とは 到達点であって、そのプロセスである ”生き方=人生” とは異なります。 よく「運命が既にが決まっているのなら、努力しても仕方がない」という人が居ますが、同じ運命であっても、生き方でそのスケールが変わると、人生は全く異なるものになります。 同じ仕事に従事していても、技術や能力に磨きをかけていれば、有能なパートナーや理解ある投資家に恵まれ、人脈が広がり、自分がやっている事は変わらなくても 時代のニーズが変わることで 思わぬ方向にビジネスが展開することになります。 そんな一見ラッキーと思われるような出来事や、思わぬ巡り合わせが起こり、適切な人材も集まって、知らず知らずのうちに良い方向に導かれるのが引き寄せのパワーです。 ですから運命とは悟って 頑張るべきものであって、知ったから諦める、分かっているから手を抜くべきものではありません。
また自分の運命が分かない人であっても、とにかく行動を起こすことによって引き寄せの法則を発動することが可能になります。 様々なことを経験し、学び、楽しみ、奉仕するといったアクションを起こしていると、そこにエネルギーが生じます。 引き寄せの法則は自己暗示や言霊、信念ではなく、行動がもたらすエネルギーに反応し、発動されるものなのです。 引き寄せの法則が発動されれば、それまで知らなかった自分の運命に徐々に、そして確実に引き寄せられて行くのです。
行動と同じくらい 引き寄せの法則の発動に有効なのは、知的好奇心です。 新しい興味の対象や掘り下げた勉強などで 脳に新鮮なインパクトやセンセーションを送り込むと、知的欲求と精神的エナジーが高まるので、そこからも引き寄せのパワーが生じます。

引き寄せの法則は、犯罪者が仲間を集め、装備を整えて犯罪を起こすようなネガティブのケースで働くこともあります。 良いことをすれば、良いことが自分に返って来て、悪い事をすれば、悪い事が自分に返って来るのが英語で言うカーマ、日本語で言う因果応報ですが、引き寄せの法則はそんな 善悪やモラルとは無関係のエネルギーの法則です。エネルギーを生み出せば、別のエネルギーを引き寄せ、より大きなエネルギーを生み出すので、更に大きなエネルギーと引き合うと考えると分かり易いかと思います。
大きな野心を持たない人でも、人間が生命体である限りは 最低限自分を維持し、動かす程度のエネルギーは持ち合わせています。 そのエネルギーは趣味、スポーツ、仕事など、何かに取り組んで効率良く循環させる術を持たないと、安定した結婚生活に退屈して浮気をしたり、 攻撃の対象が欲しくなって家庭でのDV、学校や職場での虐めを行う等、くすぶったエネルギーがはけ口を求めて暴走することになります。

私は引き寄せの法則は、ある意味で 宇宙の秩序(=神)が前向きに生きる人間に送ってくれるエールのようなものだと考えています。 自分の運命に全うするために行動する人を正しい方向に導きながら、その時々に必要な経験やサポート、武器や人材をもたらしてくれるのが引き寄せの法則であり、 前述のように成功や財産はその副産物であり、結果に過ぎません。
したがって前向きに行動さえ起こしていれば、たとえ引き寄せの法則など知らなくても、十分にその恩恵に授かることができるはずだと信じています。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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